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【ECソリューションマップ2021「ECモール&プラットフォーム編」〈有力モールに成果と展望を聞く〉】
eBay Japan合同会社(イーベイ・ジャパン)が運営するECモール「Qoo10(キューテン)」は、2020年に流通総額が拡大しただけでなく、愛用者が増え、収益力も拡大した。強みである20〜30代女性向けのコスメ、ファッションの取扱高が伸び、その他の食品や日用品、家具も成長した。マーケティングや顧客体験の進化について、ファッション&ビューティ営業本部 本部長であり、1月20日に代表取締役に就任したグ・ジャヒョン氏に聞いた。
――「Qoo10」の2020年における実績は?
2020年は日本のEC市場において、歴史に残る1年になったと思うほど大きなインパクトがあった。「Qoo10」も高成長を遂げることができた。収益の低い取引が縮小し、収益の高い取引の割合が増えた。流通総額も成長でき、中身も改善できた。
――収益性を改善できた要因は?
一つ目はカテゴリーのポートフォリオの変化だ。手数料が高いコスメなどのビューティーやファッションがより大きく伸びた。二つ目は流入チャネルの変化。グーグルやヤフーの広告、提携先の価格コムからの流入は、集客に費用がかかるため収益力は落ちる。コロナ禍の2020年はユーザーが自ら「Qoo10」のスマホアプリをダウンロードしてくれたり、外部チャネルを経由せずにダイレクトに入ってくる割合が増えた。
三つ目はマーケティングの変化。2019年まではテレビCMなどマスマーケティングを中心に展開していた。2020年はターゲットを絞り、ユーチューブなどのSNSや検索サイトのキーワード広告などに、オンラインからの集客がメインにマーケティングを行った。ユーチューバーやインフルエンサーを活用したマーケティングにも注力。数十人のインフルエンサーと提携し、ターゲットを明確にしたマーケティングも展開することで効率が高まった。マスマーケティング中心じゃなくても新規顧客は着実に増えており、会員数は1600万人くらいまで増えている。
若い女性客に焦点
――どのユーザー層にフォーカスしたマーケティングを展開したのか?
フォーカスしたのは、これまでも顧客層の中心となっていた若い女性顧客だ。「Qoo10」の顧客の約8割が20〜30代の女性となっている。商品でも若い女性向けのコスメの構成比率が上がっている。コスメなどのビューティーやファッションを中心にした品ぞろえを強化した。
――マーケティングや商品戦略以外に若い女性顧客向けに強化した点は?
サービス面でも2020年に新しい決済手段を導入した。若い世代のニーズが高いPaidy(ペイディー)などの後払い決済やLINE Payを追加している。決済会社とともに利用促進を図るマーケティングを展開したことで利用率も高まっている。11月に実施した「メガ割」セールでは、この二つの決済手段が全体の20%を占めるくらいまで利用が伸びている。今後、PayPay(ペイペイ)の導入も検討しており、2021年中には導入できると思う。
スマホアプリの利用も伸びている。もともと全体の90%がモバイル経由の利用だった。大手モールのアプリに加えて「Qoo10」のアプリを利用する人が増えている。これは「Qoo10」でしか手に入らない海外ブランドや韓国ブランドのアイテムが充実しているからだと思う。感度の高い若い女性が、商品を求めてたどり着いた先が「Qoo10」だったというケースが増えている。韓国に旅行してショッピングしていて人も、コロナで旅行に出かけられず、国内で入手する手段として「Qoo10」を利用するケースも増えたと思う。
――K-POPや韓国ドラマなど韓流ブームも盛り上がっているが、その影響もあったのか?
2019年は日本で開催したKーPOPのコンサートにスポンサーの1社として参加したが、2020年はコンサートを主催した。ただ、コロナの影響でコンサートはオンラインでの開催となった。数万人のライブストリーミングをするグループもあった。コンサートを開催するだけでなく、K-POPのグッズも「Qoo10」で販売しており、人気を集めた。関連会社のeBay Korea(イーベイコリア)から輸入販売したり、韓国の出店者が販売したりしている。
販売事業者の応援企画継続
――国内出店者の獲得にも注力したのか?
海外や韓国の商品を買えるのは強みだが、「Qoo10」はそれだけではない。日本の出店者の商品も強化している。2020年5月からは「頑張れ!ニッポン!応援キャンペーン」として新規出店店舗の販売手数料をゼロにして、オンラインシフトを支援した。ファッション、ビューティー以外も20年はフード(食品など)、リビング(日用品・家具など)のカテゴリーが伸びた。「頑張れ!ニッポン!応援キャンペーン」は12月までの予定だったが、コロナの影響が続く中、オンラインシフトしようとしている事業者が多いため、さらに半年間延長することにした。
――年4回実施している大型セール「メガ割」の反響も高まっているのか?
「メガ割」は毎回、顧客の反応が良くなっている。2019年に始めたころは全体の流通総額の20〜30%程度が「メガ割」だったが、直近は全体の60〜70%が「メガ割」からの実績になるほど反響が大きくなっている。ユーザーに浸透してきたのに加え、参加する出店者数が増えている。大きなブランドはすべて参加するようになっており、様子見だった店舗も最近では「次のメガ割はいつですか」と訪ねてくるようになった。「メガ割」に向けて商品を用意する店舗が増えている。2021年も四半期に1回は「メガ割」を開催する計画だ。現状の「メガ割」にどのような新サービス、企画を加え、進化させていくかが課題だ。
――2021年の戦略や展望は?
全体の方向性は2020年と変わらない。差別化できるファッションやビューティーなどのカテゴリーを強化する。特に強みとなっている韓国コスメは現地での営業を継続し、まだ日本に入ってきていないブランドの誘致を進める。ファッションに関しては国内外のデザイナーブランドの取り扱いを強化する。ラグジュアリーブランドではないが、ノンブランドでもない、その中間の4000〜5000円くらいのアイテムが人気を集めている。コロナの影響がまだ続いている中で、フードやリビングといったカテゴリーの取り扱いも強化していきたい。
アプリの改善も継続する。ユーザビリティーにおいて部分的に改善するだけでなく、アプリを探す段階から商品が届くまでのトータルなユーザー体験を改善していきたい。この部分では日本の他大手ECモールよりまだ遅れている部分もあるので、他社並みに引き上げていきたい。
マーケティングにおいてはSNSのアンバサダープログラムを展開する予定だ。著名なインフルエンサーだけでなく、一定のフォロワーを抱えているマイクロインフルエンサーも対象にプログラムを提供する。数百人のインフルエンサーと連携することで、ターゲット層へより効果的にアプローチしたい。
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